ウサギは犬・猫の次に飼われることの多いペット動物です。おとなしいイメ-ジがあるので、幼稚園や学校などでも多頭飼育をしたり、ご家庭でも2匹以上で飼われているケ-スもあります。
ウサギは、周年発情といって1年中発情があります。当然、雄と雌がいれば妊娠することになります。妊娠すると1ヶ月(妊娠期間30~32日)で4~10匹ほどの子供を生みます。しかも、多ければ年に4~8回位の出産が可能です。
生まれた子供の雄は4~9ヶ月齢位、雌は6~10ヶ月齢位で発情・交尾が始まります。母ウサギも子ウサギもどんどん出産をし続けることになります。
雄でも雌でも1匹飼いなら出産の心配はありませんが、病気の予防や問題行動の治療として、去勢および避妊手術をすることでよい結果がでています。
去勢手術(オス)・避妊手術(メス)を行う時期は、共に生後6カ月以降を目安にしています。
犬と猫の去勢および避妊手術は広く実施されるようになりましたが、ウサギについてはまだ一般的というわけではありませんが、以下の理由により、去勢・避妊手術をされることをおすすめします。
去勢・避妊手術のメリット

  1. ケンカの軽減
    未去勢・未避妊のウサギは、複数で飼育するとケンカをすることが多く、怪我をした時には細菌感染を引き起こし、致命傷になるケースも少なくありません。去勢・避妊手術を行うと、ケンカの頻度をおさえることが可能になります。
  2. 尿スプレー
    尿スプレーは、特に雄に縄張り・テリトリ-のために見られる行動ですが、去勢手術によって95%位無くなります。
  3. 攻撃性の抑制
    未去勢の雄ウサギは、マウンティングをしたり、縄張り意識が強くなり自分のテリトリ-に入ろうとする人や他の動物を攻撃します。
    未避妊の雌ウサギは、特に発情期にホルモンバランスの影響で情緒不安定な状態になり、飼い主さんとのコミュニケーション障害になったり、気が荒くなり人に噛み付いたり向かってきたりすることがあります。これらの精神的・ホルモン的な原因による攻撃性の抑制等に効果があります。
  4. 繁殖防止
    ウサギは、自然界では自分たちより強い肉食獣に食べられてしまう側の動物です。ですから、子孫を多く残すための優れた繁殖力を備えています。したがって、性成熟した雄と雌を同居させると、たちまちたくさんの子ウサギが産まれ、どんどん数が増えてしまいます。繁殖を望まれないなら、避妊手術をおすすめします。
  5. 生殖器疾患の予防
    雌ウサギは、ホルモンバランスが崩れることによって生殖器の疾患にかかりやすく、5歳以上の80%に子宮疾患が発生していると言われています。罹患頻度の多い疾患としては、以下のものがあります。
    ・子宮腺癌 ; 発生率は、4才以上のウサギで50-80%とも言われています。
    半数以上の確率で雌ウサギに発症し、命を脅かす怖い病気です。
    ・子宮蓄膿症
    ・子宮水腫
    ・子宮内膜過形成
    これらの疾患は、血尿や乳腺の異常、お腹が異常に大きく張ってくるなどの症状から発見されるケースが多いのですが、まったく症状がないこともあります。例えば子宮水腫では、気付かずに放置しておくと腫大した子宮により胸が圧迫されて呼吸困難になり、液体の貯留が多くなると、やがて子宮は破裂して、生命が危険な状態になります。
    子宮が捻じれて激しい痛みが出現することもあります。
    これらの子宮疾患は飼い主様の早期発見と、病院での早期摘出手術を行えば、予後は良好な場合が多いのですが、症状に全く気付かないで病気が進行して発見したときには、手術をする事も難しく、既に手遅れといった場合が多くあります。

去勢・避妊手術のデメリット

  1. 手術を行うときは、麻酔のリスクという問題が発生します。
    どんな動物でも、ヒトにおいても、麻酔をかけることは100%安全とは言い切れません。
  2. 肥満になることがある。
    異性への関心が無くなり、食べることだけが楽しみとなり、食べ過ぎによる肥満になるウサギがいます。

ま と め
ウサギの麻酔は、犬や猫と比較して、特に危険だということはありません。現在では麻酔技術も発達して、より安全に手術を行う事が出来るようになっています。
また、一般的に、避妊や去勢といった手術は、若く、健康な状態で行うので、麻酔や手術のリスクは格段に低いと言えます。
逆に、加齢、病気の進行があると、一般状態も悪化してリスクは上昇します。
手術をしなくても太っているウサギは多いものですが、大切なのはエサの内容と与え方です。
以上のことから、ウサギも犬や猫と同様に積極的に去勢・避妊手術を選択されると良いと思います。
メリット、デメリットと併せてご家庭でご判断してください。

ウサギの去勢・避妊手術/診療ノート